GOZKI MEZKI

@sophizm の上から涙目線

アニメのキャプチャ画像をダウンロードすると違法になるの?


0,導入

いつもの屁理屈です。
服用には用法用量をご注意ください。



1,違法ダウンロード刑罰化とは

言うまでもなく10月1日にとうとう施行された違法ダウンロードの刑罰規定導入。どうにも杜撰な文言の条文だということは過去に指摘しましたが、今回も刑罰規定の不明瞭な部分と文化庁のQ&Aについて妄想してみたいです。

まずはいつもの条文

著作権法第119条第3項
第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

省略します

私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金。


2,漫画本を撮影した動画は刑事罰の対象にならないらしい

文化庁による違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A(※pdf注意)では、Q2において

なお、例えば、市販の漫画本を撮影した動画が、刑事罰の対象に当たるのではないかとの問い合わせがありますが、漫画作品自体が録音・録画された状態で提供されているものではありませんので、有償著作物等には当たりません。

なる記載があります。

「漫画作品自体が録音・録画された状態で提供されているものではない」から有償著作物等には当たらないとのこと。有償著作物等とは、

  1. 録音され、又は録画された著作物又は実演等
  2. 有償で公衆に提供され、又は提示されているもの

と定義づけられている。

文化庁の解釈によると「有償で公衆に提供され、又は提示され」たときに「録音され、又は録画された著作物又は実演等」であれば有償著作物等で、それ以外は有償著作物等に当たらないということではないかと想像できます。



3,アニメのキャプチャ画像は有償著作物等か

では、アニメのキャプチャは有償著作物等か。ここでは当該アニメが既にDVDなどで市販されている(=有償で公衆に提供され、又は提示されている)ものを前提とします。

当該アニメは

  • 録音され、又は録画された著作物

ですし、上記の通り

  • 有償で公衆に提供され、又は提示されているもの

です。

この定義で言えば当然アニメは有償著作物等ということになる。



4,アニメのキャプチャ画像をダウンロードすると罰則があるか

端的に言えば、ない。「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を行った」という行為が処罰対象なので、画像のダウンロードは「録画*1」には当たらない。



5,漫画本を撮影した動画との違い

実際にはまずありえないが、例えばアニメのキャプチャ画像を動画撮影した場合、果たしてその動画が刑事罰の対象となるのか。上記の通り、アニメのキャプチャ画像は有償著作物等に該当する可能性があるし、それを動画撮影したものをダウンロードする行為は「「自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録画」に当たるので、119条3項に該当しそうだ。

漫画の動画撮影はOKで、キャプチャ画像の動画撮影がNGだとしたら、なにか少しおかしいものを感じる。



6,余談

セル画はどうか。

もうここまでくると訳が分からない。セル画単体で見るとこれは絵画の著作物と言えるので、録画には当たらず有償著作物等ではないため、処罰の対象からは外れるように思える。一方でアニメという録画物の一部であるなら、それは録画に当たり有償著作物等になるのではないか。そもそも、キャプチャ画像は有償著作物等でセル画は有償著作物等じゃなかったり、キャプチャ画像は有償著作物等なのにセル画を写真に写したらそれは有償著作物等じゃなかったりとなると、なにがなんだか訳が分からない。

そもそもの原因は、有償著作物等の定義が自動公衆送信されているデータの形式ではなく、有償で販売されている際の形式を基準としているため、対象を狭める意図とは違うところで対象が変に広くなってしまう可能性があるのではないかと思う。

ちなみに、有償著作物等は音楽に関しては「録音」なので、楽譜のみ販売されている音楽の著作物を演奏したものを録画し、アップロードされたものをダウンロードしても、それは有償著作物等には当たらないために罰則の対象にならないはず。つまり、音楽の著作物では、有償著作物等とされるためには常に演奏/実演が伴っているということ。



7,まとめ

ホントによく分からない条文だと思います。

*1:録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。