スクショ違法化に二度目の奇跡は起こらない、たぶん。
今年の3月、自民党総務会での了承を残すまでに煮詰まった違法ダウンロードの一般化を含む著作権法改正案は、直前になって沸き上がった国民世論の猛烈な反対と、日本漫画家協会や日本建築学会などクリエイター団体や法律の専門家などからさえも出た反対意見によって、急転直下、自民党総務会が了承を見送られたことで辛くも立法化を避けられた。
奇跡だと思った。
正直、ダメだろうなって思ってた。前年から著作権界隈では違法ダウンロードの一般化の動きに対して警鐘を鳴らしていたが、実際のところ事の重大さに比べて驚くほど市井のリアクションは薄かった。過去の経緯からして、一度ルートに乗ってしまうとどれほど多くの反対意見がパブコメで寄せられようとも微修正で通ってしまうのに、これほどまでに危機意識が共有されていない状況だと、もはやどうしようもないな……と。だから、それがわずか1ヶ月前という直前に爆発的に盛り上がりネット世論を動かし、リアル世論を動かし、議員を動かし、なんとか阻止できた。奇跡だなって思った。
でも同時に、絶対にまた来るぞ、と思った。
次はダメかもしれない、と不安に思った。
わずか半年。想像よりも相当早く、また来た。
アニメのキャラクターを勝手に使ったツイッターのアイコンも入った画面の「スクリーンショット」(スクショ)行為を違法にすると、どのくらい懸念を感じますか――。文化庁が9月30日、権利者の許可無くインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などのダウンロードを違法とする著作権法改正について、パブリックコメント(意見公募)を始めた
今回もなぜかリアクションは希薄だ。きっと二度目の奇跡は起こらないだろう。
また阻止できるはずだ、なんて甘い期待は捨てたほうがいい。
3月の了承見送りで重要な役割を果たしたのはMANGA(マンガ・アニメ・ゲーム)議連会長で自民党の古屋圭司衆議院議員だった。
報告です。著作権改正法案は次期国会に先送り決定。今朝自民党幹部会で決定しました。党最高意思決定機関である総務会にて差戻しになってから、鋭意再検討してきた結果だ。自民党の良識を示せたと思う。皆が納得できる法律に仕上る。その為に党主導で関係者からヒアリングなど丁寧な対応をしていく。
— 古屋圭司 (@Furuya_keiji) March 13, 2019
その古屋議員が9月10日のブログにて以下のような報告を掲載している。
集英社の堀内社長他が来訪。春先に話題となった著作権法改正問題について(公財)日本漫画家協会と出版社で組織する出版公報センターの間で共同声明を発表することについて事前に報告を受ける。発表は今月17日の予定。内容は発表時に詳細をご覧いただきたいが、基本的に両者がバランスよく共に連携できる法律整備を要望するとしており、これにより脱法行為を防ぐ一方で過度な萎縮が生じないようにする方向で一致。今後は我々MANGA議員連盟としてもしっかりとフォローしていきたい
MANGA議連には根回し済み、事実上の了承を得たかたちになっている。前回、懸念を表明した日本漫画家協会についても、出版広報センターと共同で9月25日に『「侵害コンテンツのダウンロード違法化」と「リーチサイト規制」に関する共同声明』を出している。
私たちは改めて、侵害コンテンツのダウンロード違法化およびリーチサイト規制のための法整備が適切かつ迅速になされることを願う
とある。この半年にどのような政治的な駆け引きがあったのかは分からないけれど、両者ともに違法ダウンロードの一般化を堰き止める防波堤としての役割はもはや期待できない。
事態は相当厳しいものだと覚悟したほうがいいのではなかろうか。
前述の通り、文化庁は9月3日からパブリックコメントを始めた。前回の見送りを受けて文化庁は臨時国会に向けて法案を練り直すとしていたが、添付される概要説明資料には「自民党・公明党 条文審査資料(平成31年2月22日)」と明確に書かれている。前回と全く一緒のものだ。完全に国民を舐めてるでしょ。
懸念をできるだけ多くの人に文化庁へと届けてほしい。今回は前回以上の熱量がないと、あれよあれよと言う間になんの突っかかりもなくスルッと法案通ってしまうだろう。スクショ撮っただけで犯罪になるなんていうどう考えても異常な法案が。