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@sophizm の上から涙目線

フォントのアウトライン埋め込みの法的問題(転載)

以下、妖精現実フェアリアルより転載*1

TrueTypeフォントのファイル全体をコピーして、無制限に使うことはできない。 一方、フォントの字体(出力)そのものには著作権はなく、無制限に使うことができる。

この両者は、少なくとも米国では、はっきりしている。日本でも、字体に著作権がないことは確定*2しており、 TrueType=ソフトウェアという解釈も、たぶん争えば同様の結論になるだろう。

その中間として、フォントの特定の数文字のアウトラインを再利用する(特にSVGなどに埋め込む)のは、どうか。 現実にはよく行われていることではあるが、 厳密には「たった1文字でも保護される可能性がある」と考えておいたほうが無難だろう。 ただし、保護されるのは字体(文字のデザイン)ではなく、アウトラインのパスを作っている点の選択だ。 ラスタ画像で埋め込む場合は、見た目は同じグリフを使っても侵害にならない。

以下、微妙な問題になるが、ベジェ曲線を折れ線に置き換えた場合(Flatten)、実質的に拡大できなくなるので、問題が回避できる可能性がある。 「制御点の選択の仕方が保護される」というロジックに厳密に従うと、Flattenの結果はオリジナルの点選択と有意に相関するので、依然問題があるとも言える。 しかし、文字そのもののデザインが保護されないことと、点を選び直せば合法的に利用できること、点はプログラム的にランダムに選び直せることを考えると、技術的には、事実上、この制限は容易に回避できる。 これは純粋に技術的な話で、点を選び直しただけで実質同じようなフォントを勝手に販売して利益を上げるようなことが不道徳であるのは、言うまでもない。 しかし技術的に無意味なことを法的に制限しても仕方ないとも言える。

参考として、この現在の考え方の根拠となるのは、1998年の略式判決、 Adobe v. Southern Software だ。 最終的な字体のデザインは保護されないという従来の判例を踏襲しつつ、Pathの点選択が保護されるとしている。 これは実質的にフォントファイル全体をコピーして自分の商品としてしまった例で、倫理的には明らかに問題がある。 プレゼン資料などで数文字埋め込んだような場合にまで、このロジックになるのか、 それともフェアユースになるのか、そこははっきりしないが、この問題は気を付けるべきだろう。 一般のエンドユーザは、ラスタで埋め込んでいるのかベクタで埋め込んでいるのか意識すらしていない可能性がある。 逆に、フォントによっては、ライセンスで埋め込みを明示的に許可しているものもある。

判例で点選択に創造性を認める根拠は、こうだ。「独立して作業する二人のプログラマ(フォント作者)が、同じデータ(文字デザイン)とツールを使って見た目は区別できない出力(字体)を達成したとして、二人の点選択はほとんど一致しないだろう。従って点の選択には創意がある」つまり、同じラスタデータを流用して自分で点を選び直すと、派生ではなく、オリジナルと同等の創造物になる。 「スケールを変える程度のささいな変更では、著作権侵害は解消されない」ともあり、「もっと大きな変更が加われば解消される」とほのめかしている。 オリジナルとまったく違う状態まで変えてしまえばもはや盗用と言えないのは当たり前だが、この場合の「オリジナル」は点選択で、文字デザインではない。 最終的に視覚で認識できる文字の形(表現)がまったく同じでも、内部表現が実質的に違えば(仮に字体をトレースしていても)著作権上は問題がないことになる。 単に法律上の話であり、全部の文字をトレースして“新しい”フォントを作るのは、物作りの態度としてばかげているし、もちろん実用の見地からは(最終出力が同じならわざわざトレースし直すのは)時間の無駄でしかない。

かなり微妙な問題が潜んでいるのは確かだ。 現時点では、文字の埋め込みを容易にするGet Path機能は価値中立的だと判断している。 文字の埋め込みを許可しているフォントもたくさんあり、私的利用なら最初から問題がなく、合法的な用途が多いからだ。 SVG編集ツールではフォントのアウトラインのパス化は、ごく一般的な機能なので、常識的にも問題がないと考える。 つまり、このようなツールや手法を紹介すること自体までが、問題になる可能性はほとんどないと考えている。 問題を回避するために、ツールで、点をランダムで自動再選択することは技術的に可能だが、上記のようにそれは無意味でばかばかしい。 それより、もっと根本的に、こんなことであれこれ心配するより、フリーのフォントを使って別のサンプルを作り直すのが得策だろう。 さしあたって、例題とした異字体の関係でアドビのフォントを使ってしまったが、 再配布できない可能性があるものを配布するのは好ましくないので、この点も含めて、今後の検討課題としたい。

*1:妖精現実の記事は再利用自由、改変も含めて、自由に利用でき、出典等を示す必要もないそうです。メモ的に転載。詳しくは http://www.faireal.net/about/

*2:sophizm注:澤田善彦氏によるフォント千夜一夜物語紹介。「フォント関連の知的財産権(1〜6)─フォント千夜一夜物語(16〜21)」参照。